大倉山でなぜギリシャ? ~「エルム通り」の風景と熱く燃えた人たちの物語

「大倉山みんながみえる通信」第1号:2017年2月18日発行より】切妻屋根、窓台、円柱の建物が並ぶオフホワイトの街――“ギリシャ”をほうふつとさせる大倉山エルム通りの風景です。なぜ日本で”ギリシャ”にこだわるのか? そこには「自分たちの手で自分たちのまちを作ろう」と、熱く燃えた人たちの物語がありました。

自分たちのまちは自分たちの手で守る!

エルム通り商店会会長・山田浩之さんと商店会役員・阿部修さん。熱い想いは今も変わらず、さらには次世代にも受け継がれています

今から約30年前、全国の商店街はスーパーに押され大打撃を受けており、大倉山商店街も例外ではありませんでした。

「このままじゃまずい!」――

危機感を持った大倉山商店会役員たちは、人の流れを戻すため街の整備に乗り出します。考え着いたのが、ギリシャ以前の建築様式で有名だった大倉山記念館にならい、通りを同じ様式でまとめること

道路拡張のための土地買い上げ、無電柱化に向けた関係者の説得、休業中の収入補償や各店舗の負担金の計算方法検討など、仕事が終わってから夜中過ぎまで年間300回を超える話し合いの末、なんとか関係者全員の承諾にこぎつけました。

昭和62年のエルム通り

地方から出てきてずっと頑張ってきたこの地を、自分たちで守ろう」――

役員たちの想いは、奔走する役員を支える家族、説得に応じた街の人々に確かに伝わり、それぞれが最大限努力し「自分たちの街」を作り上げます。

整備後はギリシャ・アテナ市にあるエルム通りと姉妹都市提携も結びました。

普段何げなく通る道には人々のこんな大切な想いがつまっています。

大倉山エルム通り商店会の「建築デザイン協定」とは
(大倉山エルム通り商店会協定より)
建物の正面を大倉山記念館の様式にならって

  • 軒高をそろえる
  • 円柱や正三角形のモチーフを使う

当時の想いをつなぐため、平成24年に改めて「大倉山エルム通り街づくり協定」ができました。「新築、改装時には看板の色や建物の外観について街づくり委員会の承認を得る」「のぼりを立てない」「路上禁煙」なども加わり、街の美観を維持する努力が継続されています。

【大倉山のギリシャClose Up!】

大倉山の元祖ギリシャ「大倉山記念館」

大倉山記念館

大倉精神文化研究所研究部長の平井誠二さん

昭和7年に実業家で教育者の大倉邦彦(おおくらくにひこ)氏により「大倉精神文化研究所」の本館として建てられました。

古代ギリシャ以前の様式に東洋の意匠(正面の八咫(やた)の鏡(かがみ)と鳳凰(ほうおう))を取り入れ、大倉氏の掲げた「東西文化の融合」を表現しています。昭和56年に横浜市に寄贈され、昭和59年に「大倉山記念館」として開館しました。

大倉精神文化研究所研究部長の平井誠二さんは、「大倉邦彦さんは大倉山を世界に見立てたので、中心にある記念館は世界のおへそですね」と話します。


【大倉山のギリシャClose Up!~エルム通り】

Drinks&Foods
REVEL

大倉山2丁目2-1エルム392ビル2F(電話:045-541-5242)
元は阿部さん(※商店会役員・阿部修さん)の洋食店「カヴァヌーラ」でした。ギリシャ風の内装とともに阿部さんの想いも引き継ぎました。大倉山生まれなのでこの街を楽しくしたい!
(オーナーシェフ・和田拓也さん)

パティスリー
ピオン

大倉山3丁目2-2(電話:045-544-8708)
エルム通りが整備されたばかりの時に、偶然見つけた物件が今の店舗です。ギリシャにちなんだケーキやチョコレートを考えるのが楽しいです。
(オーナーシェフ・塩坂彰敏(あきとし)さん)

婦人服
ブティックフジヤα店、β店

α店・大倉山3丁目2-1(電話:045-543-0248)
β店・大倉山2丁目4-1(電話:045-545-0248)
先代がギリシャ大使館から頂いたレリーフを店内に飾っています。街を整備した当時は、道が広がったのが印象的でした。
(代表・濱野景一さん)

電器店
フクダデンキ大倉山店

大倉山3丁目1-22(電話:045-531-2170)
エルム通りは建物が白で統一されていて、まとまっている印象です。ギリシャつながりの大倉山記念館ともっとコラボしていきたいですね。
(店主・福田克己(かつき)さん)

寝具店
豊屋寝装店

大倉山2丁目5-8(電話:045-541-4648)
開店前に毎朝シャッターと柱は磨いています!以前通りにあった洋装店から譲り受けた飾り柱が入口にありますので、探してみてください。
(店長・斎藤守彦さん)

ドーナツ
floresta

大倉山2丁目4-10(電話:045-642-4617)
「ギリシャ風の柱はお店のイメージに合わないかも」と不安でしたが、実際に見てみると「まっしろの外観が黒の内装にマッチしていいな」と思いました。
(店長・漆原梓さん)

コミュニティスペース
大倉山おへそ

大倉山2丁目5-11(電話:045-717-6778)
前は「エルムギャラリー」でした。ギリシャの街並みをつくり上げてきたエルム通り商店会の方たち、その想いを知ったときの感動は大きかったです!
(共同代表・小松由紀子さん)

エルム通り商店会より

平成30年にエルム通りの完成30周年を迎えます。日頃お引き立てをいただいております地域の皆様と一緒に楽しめる祝賀行事を検討したいと思っております。
(エルム通り商店会 会長 山田浩之さん)

(いずれも2017年2月18日現在の情報です)