【「新横浜新聞~しんよこ新聞」提供:2018年1月31日配信記事より】今年(2018年)1月15日、港北区内の主に70歳から80歳代向けに限定しためずらしい無料の月刊地域情報紙「えがお」が創刊しました。
日本のインターネット普及率が8割を超えたなかでも、ネットを使わない高齢層に直接届けたいと“紙”のメディアとしてスタートした同紙。菊名エリアに近い大豆戸町の在住で、日吉や綱島にも住んだ経験がある発行者の本間克之さんに発刊の狙いを聞きました。
「港北えがお」は“プラチナ世代”と名付けた70歳以上の高齢層に限定したタブロイド判(通常の新聞の半分サイズ)のフリーペーパーで、創刊号は6000部を印刷し、高齢層が集まる地区センターや図書館、地域ケアプラザ、店舗などを通じて配布したほか、取材時などにも手渡しで配っているといいます。
4ページ建てで制作された創刊号の紙面では、大倉山3丁目の地域子育て支援施設「どろっぷ」でボランティアスタッフとして働く60代から70代の女性3人の活躍を取材したり、港北区内で紙芝居を通じて民話や昔話を伝え続けるグループ「たまてばこ」の活動を紹介したり、日吉本町ケアプラザで行われている「シルバー健康体操」を自ら体験してみたりといった取材記事のほか、川柳や俳句、絵手紙などの投稿作品掲載と、歌や運動など区内で活動するサークルのメンバー募集の告知がぎっしりと詰まっています。
「創刊号はおかげさまで好評をいただいています。ただ、今回は4ページだったので記事や作品を載せるスペースが足りず、できるだけ早くページ数を増やしていきたいですね」と話します。
発行者である本間さんは現在54歳。アウトドア系雑誌などを刊行する出版社で勤めたのちに介護福祉士に転じ、8年間にわたって勤務したことで出版と介護の世界を経験することになり、「シニアの方に彩りある第二の生活をおくっていただくため、自分の経験が少しは役に立つかもしれない」と、高齢層向け地域情報紙の創刊につながったといいます。
少年時代から当時は港北区だった北山田周辺(現都筑区)で育った本間さん。「街へ遊びに行くというと綱島か荏田で、特に綱島は中学生くらいの頃から自転車でしょっちゅう行ってました」といい、社会人になって住んだのは綱島西や箕輪町。近年は菊名駅に近い大豆戸町で暮らしており、「港北区内に長年住んでいますので、だいたい隅から隅までわかると思います」と電動自転車やバイクにまたがって区内を走りまわり、情報を集めると同時に「港北えがお」を配る日々です。
同紙は無料で配布を行っているため、唯一の収入となるのが広告出稿。それが安定するまでは、取材から編集、営業、デザイン、そして配布までを1人でこなし、印刷も割安な「ネット印刷」を使うなど懸命に節約しながら月に1回の定期発行に備えます。
「ありがたいことに、創刊号を見て少しずつですが支援いただける方が出てきました」といい、今後は読者が記事や写真を発信する参加型の紙面づくりも目指していく考えです。
「自分の父と母はすでに亡くしてしまったのですが、毎日取材や配布を通じて、高齢層の方にお話を聞いていると両親に会っているような心境になっています。取材をしているつもりが、逆にこちらの話を聞いていただいていた、ということも多く、そんな懐の深さにやる気をもらっています」と熱く語る本間さん。
他ではあまり見ない「地域」と「高齢層」をキーワードにした地元フリーペーパーは、2月以降も毎月15日に区内の地域ケアプラザや地区センターなどで配布される予定。今後の発展が期待されます。
(いずれも2018年1月31日現在の情報です)
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